研究課題
本研究では、前年度までに、有理数体上のアデール環を状態空間とするマルコフ過程を構成した。22年度には、その有限整アデールからの脱出時刻を用いた数論的関数の表現を実現した。過程の構成のために以前に得ていたマルコフ連鎖の最初のジャンプ時刻が、すなわち、この研究で必要となるマルコフ過程の有限整アデールからの脱出時刻Tとなることから、その分布およびジャンプ直後の位置の原点からの距離dの分布を計算により求めることができた。この構成法で得られた過程では、各p成分が互いに独立となることから、dの期待値やモーメントがpに関する積の形を取ることが判明した。この事実を利用し、リーマンのゼータ関数をはじめとするオイラー積表示を持つ数論的関数について、Tやdの期待値やモーメントによる表示式、さらには関数等式をいくつか得ることができた。これらの途中経過と成果について、国内で開催された国際研究集会とセミナーで講演し、論文にまとめ発表した。また、この研究をさらに発展させるため、上述のマルコフ過程の再帰性などの確率論的性質についてより詳細な計算を行い、その特有の性質を利用した数論への応用について考察した。関連した研究として、2次元ユークリッド空間上のultrametricなジャンプを持つマルコフ過程の正則性について、共著論文として発表した。さらにこの過程について、非正則な場合のpathの特徴と生成作用素の固有値について解析を行い、従来になかったタイプの過程としての特性が判明した。
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Journal of Theoretical Probability
巻: 23 ページ: 748-769
p-Adic Numbers, Ultrametric Analysis and Applications
巻: 2 ページ: 341-359