グラフの因子問題とは、与えられたグラフに対して、特定の性質をみたす全域部分グラフを見つけるという問題である。全域部分グラフとは、与えられたグラフのすべての点と一部の辺からなるグラフのことである。本研究の目的は次の2点にある。 (1)グラフ全体でもつ構造がグラフの一部分にもあり得るかを研究し、グラフの全体で知られている性質との関連性を追及していく。グラフにおいて予め指定された部分グラフに注目し、それが特定の性質をみたすグラフで覆えるか否かを判定する必要十分条件をみつける。 (2)連結因子の構造を様々な角度から検証し、その存在定理の解決方法を提示する。 本年度は、上記研究目的の(1)の解決を主な目標とした。当分野におけるこれまでの研究では、グラフ全体に所望の性質をみたす全域部分グラフ(因子)があるかという問題に対して、多くの研究がなされ、多くの結果が得られている。しかし、グラフに関して所望の構造があるか否かという課題は、グラフ全体であれば多くの性質が知られているにも関わらず、一部分に注目した結果は、最近になって活発化してきた研究であるため、解決すべき課題が多く残されている。この点に注目して本年度は、指定した点を端点とする全域木が存在するための次数条件を得ることができた。主定理の概略は以下の通りである。(k+1)-連結グラフGにおいて、互いに辺で結ばれていない2点の組すべてに対し、これら2点から出る辺の本数が|G|+1本以上ならば、Gには指定した点を端点する全域木がある。また、この系として、指定した点を端点として含む全域木がグラフに存在するための次数条件も得られた.
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