昨年度の研究で用いた閉凸グラフを持つ写像に対する議論を線形不等式系を表す写像に適用し、正則半径の定理が成り立つためのより詳細で具体的な十分条件を得た。昨年度の研究に比べ、この条件は確認が容易なものになっている。さらに、具体的にルベーグ二乗可積関数空間上の不等式系の反例を挙げ、その十分条件を取り除くことが出来ないことと、そのような性質の悪い不等式系に対しても、昨年度得た公式が成り立つことを示した。 また、正則性のモジュラスに対するRobinsonの上界評価の議論にsublinear集合値写像に外ノルムと内ノルムの計算を持ち込むことで、上界評価の陽的な表現を得た。これにより、昨年度の結果とRobinsonの結果の関係性を直感的に理解することが可能になった。 これらの結果を連続関数空間上の可微分な非線形不等式系に応用した。そこでは、連続関数空間の双対空間である有界変動関数空間の単位球面の部分集合が汎弱コンパクト性を持つことに注目し、Fanのミニマックスの定理を適用することで、正則性のモジュラスの等式評価と、正則半径の定理が成り立つことを証明している。 また、本課題の研究成果の発表と情報収集のため、2009年8月に米国シカゴで開かれた「The 20th International Symposium of Mathematical Programming」に参加した。
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