研究課題
本年度はラフパス理論の研究をおこなった。この理論は昔からある確率微分方程式を非ランダム化しようとするもので重要ではあるが、比較的新しいためにそれほど研究されているわけではない。微分方程式の入力するパスを、解として得られるパスに対応させるものを写像と思い伊藤写像という。通常の確率微分方程式では伊藤写像は連続にならないのだが、このラフパス理論の枠内ではなんと連続写像になってしまう。これは、ライオンズの定理とよばれ、いままでの常識をくつがえすねものであった。この結果により、この理論は注目をあつめているわけである。私はラブパス理論のうち、伊藤写像の漸近的な挙動を問題して、これを中心にとりくんだ。これはいわば、微小変動を考えている系に入力すると、出力の微小変動がどうなるかを調べる問題で、解析学ではよくでてくる種類の問題であるし一年生の微積分にでてくるテーラー展開がこの種の問題の典型であり、このことからもわかるように、ラフパス理論をつかった解析においても、重要な役割をはたずようになる可能性が高い。また実際に私は多偏差原理、ラプラス近似と呼ばれる確率論の有名な漸近問題にたいして、このラフバスに対するテーラー展開を応用する研究をした。有限次元の系の場合には、よくしられている結果の再証明なのだが、ループ空間上の拡散過程などの無限次元のモデルに関しては、新しい結果を得られた。大偏差原理というのは、確率測度が収束するときに、その速さが指数関数的であることであり、確率論のいたるところにでてくる。ラプラス近似は大偏差原理の精密化である。この証明の中で、伊藤写像のテーラー展開が使われる。
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J. Funct. Anal. 243
ページ: 270-322
The Abel symposium 2005, Stockholm, Springer
ページ: 415-434
RIMS Kokyuroku Bessatsu B6
ページ: 139-152