研究概要 |
今年度の本研究課題における研究成果に挙げられるものとして, 均衡問題および変分不等式問題に密接な関わりがあるm増大作用素の零点問題の近似解法に関連する結果が挙げられる. 本研究課題での計画に含まれる目標の一つである, 計算機シミュレーションのための実装方法を視野に入れた上での理論および実験のために必要な問題の考察として, 計算誤差の評価に関する結果が得られた. 問題解決のための主たる手法として,近似点列の収束を保証した上で, 漸化式に現れる凸結合の係数列に対する条件の緩和を検討した. 従来の弱収束定理では, 凸結合定数列の上限が1未満であることが要請されていたが, 本研究課題に関連する一連の結果の中で, 係数の無限和が発散するという条件をみたせば点列の弱収束性を保証できることが証明できた. この結果を応用すると, リゾルベントの計算誤差のオーダーをより実用的な範囲まで弱めることが可能となり, 計算機シミュレーションへの実装に有効であることもわかった. なお, これら一連の研究結果は, 通常考えられることの多い一つの作用素に対する零点集合の近似をさらに一般的にした, 作用素の列に対する結果として証明されているため, 吉田近似を用いた手法や非拡大写像列に対する一般化された不動点問題に対する陰的近似法等の問題に対しても応用可能である. 来年度以降に残された課題としては, 近似点列自身の収束速度に関する研究や, さらに一般的な非線形写像に対する収束定理についての研究が挙げられる.
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