本課題の研究目的は、アペルの2変数超幾何関数および、その一般化であるロリチェラの多変数超幾何関数について、 ・局所的性質(微分差分方程式系) ・計算機代数的手法 を用いて、基本公式を導出することである。今年度は、計算機実験を通じて、アペルの2変数超幾何関数F_1とロリチェラの3変数超幾何関数F_Dに対して有理変換公式を得た。 またその系として、ガウスの超幾何関数の有理変換公式をも得た。これらの公式はこれまでに知られていなかった新しいものである。というのも、これまでいくつか知られていた超幾何関数の変換公式は、すべて等式の左辺が、超幾何関数そのものの特殊化になっていたからである。本研究の有理変換公式は、両辺ともに有理変換を与えるもので超幾何関数の研究に新しい局面を切り開く可能性を秘めているものであるといえる。また、この変換公式と、一般化された算術幾何平均との関係も明らかになってきた。算術幾何平均の研究はこれまで、テータ関数の理論から進められてきたことを考えると、本研究の与えるインパクトは大きいと考えられる。よって本課題の研究は着実に進んでいるといえる。
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