平成19、20年度は、2複素変数羃零型と呼ばれる、原点を特異点とする1階線形偏微分方程式(しかもその中で最も一般的な形の方程式)において、その発散解がBorel総和可能となる為に、方程式の係数が満たすべき条件を与えること、を目標として研究を続けております。 「発散解がBorel総和可能となる為の条件は、方程式に形式的Borel変換と呼ばれる変換を施して得られるある1階線形偏微分作用素の特性曲線の形と深く関係がある」ことが既に分かっているため、19年度はまず、この特性曲線の具体的表示を求め、それを用いて係数が満たすべき条件を予想することを試みてきました。 当初は、予想が出来た後、20年度に証明を試みる予定でしたが、特性曲線の具体的表示を得ることが非常に困難であるため、予定を一部変更し、方程式の一般性を少し犠牲にし、やや特殊な方程式に対して条件を予想し、今年度中にその証明を完結させる、という方向で研究を進めることにしました。一般性を犠牲にしたことにより、特性曲線の具体的な表示が比較的容易に得られ、またそれを基に係数に対する条件の予想も可能になりました。そして最終的に、申請者による2006年の論文で用いられた逐次近似による方法と同様の方法を用いて、「形式解がBorel総和可能となる為の条件は方程式の係数に対するある種の解析接続可能性と、その偏導関数に対するある種の増大(または減少)度によって保証される」という結果の証明に成功しました。(上の「ある種の」と書かれた部分を実際に具体的な形で書き表すことが出来たことが最も重要な研究成果です。) 今年度の研究によって得られた成果は、上記の2006年の論文における結果の部分的一般化になっており、将来的に完全な一般化を目指す際の足掛かりになるものと考えております。 また今年度の研究成果を論文の形にまとめたものを、査読付き学術雑誌「RIMS Kokyuroku bessatsu」に現在投稿中です。
|