研究概要 |
エネルギー汎函数に支配される曲面および曲線のダイナミクスを解析することを目的とし,主に,次の二つの主題について研究を行った:主題1.ある束縛条件に従う弾性閉曲線のダイナミクス;主題2.Action minimizationに関連した変分問題. 主題1については,外部から一様な圧力をうける平面弾性閉曲線のダイナミクスについて結果をまとめた.この問題に対応する変分問題については,(i)圧力差が非常に大きい場合の全ての非自明臨界点の漸近形の導出,(ii)それら非自明臨界点の安定性および不安定性の決定,という結果を得た.一方で,運動を記述する発展方程式については,解の時間大域的存在および,その解の変分問題の解への収束,という結果を得た.これら双方をあわせることにより,圧力差が非常に大きい場合に,各臨界点の近傍における閉曲線のダイナミクスの決定に至った. 一方,主題2についてであるが,まず,action minimizationについて簡単に説明する.エネルギー汎函数E(z)がふたつのlocal minimizer uとvをもつとする.このとき,時刻Tの間に一方から他方への遷移が起こるならば,その遷移過程はactionと呼ばれる汎函数を最小化するものとして決定されることが大偏差原理により知られている. このような遷移過程を求める問題がaction minimizationと呼ばれる.こういったaction minimizationに関する研究を動機として,次のような問題を考察した:こつの平面閉曲線と正定数Tを与える.このとき,一方から他方の閉曲線に時刻Tの間に変形する曲線族の中で,曲率と法線方向への変形速度をそれぞれ時空上で二乗積分することで定義されるエネルギー汎函数を最小化するものは存在するか? この問題に関して,(i)動径対称な枠組のなかでのminimizer決定および分類,(ii)ある適当な(i)で構成した動径対称hなminimizerの近傍に非動径対称な解,つまり,変分問題の臨界点の存在証明,という方針のもと研究を行い,現在も続行している.
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