平成19年度の研究は、重み関数をもつ臨界ソボレフ・ハーディ指数をもつ放物型方程式の時間大域解の漸近挙動の解析が主たるテーマであった。本年度は重み関数をもつ場合への試金石として、主に重み関数が定数関数である場合の解析を行った。 臨界ソボレフ指数をもつ放物型方程式には、時間大域的に存在するがその最大値ノルムが時間大域的に有界でない解(無限時間爆発解)があることが知られている。解が球対称性を持つ場合には、その漸近挙動は非自明な定常解で特徴付けられることは応募者のこれまでの研究によりわかっていた。球対称性を仮定する場合は、放物型方程式に関する交点数非増加の定理など、本質的に空間一次元の場合に成り立つ強力な道具が使用可能であり、上記の結果はこの道具に基づいて証明された。一方、解に必ずしも球対称性を仮定しない場合には解析の道具が限られ、困難である。 本年度は必ずしも球対称性を仮定しない場合にも、ある時間列にそった挙動が非自明定常解で特徴づけられることを示した。また、このような解を与える初期値が、初期値空間の中で余次元1の集合をなすことを示した。さらに、自己相似変換後の解の挙動について、その減衰評価、爆発レートの評価を得た。 これらの結果を得る過程で、研究代表者は臨界ケースに特徴的なエネルギー構造のスケール不変性が重要な役割を果たすことを発見した。また、このスケール不変性と前方自己相似変換を組み合わると、特に全領域上の問題の困難の多くが解析できることを発見した。 問題の解析過程で開発されたこれらの手法は、領域が全領域であること、また臨界指数をもつことから来る困難をどう回避するかについてのモデルケースとなりえる点で、重み関数が自明でない場合の解析に貴重な示唆を与えるものといえる。
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