非線形偏微分方程式で記述されるソリトン方程式系、およびその相似簡約として得られるパンルヴェ方程式などの常微分方程式を、アフィン・リー環という無限次元リー環で記述される方程式系の持つ対称性の視点から研究している。このように考えると、ソリトン方程式やパンルヴェ方程式に関して独立に研究されていた特殊解や、方程式の解を別の解に写す変換の構造を統一的に扱うことができる。ここ数年の筧三郎との共同研究によりいくつかのソリトン方程式とパンルヴェ方程式の対応が明らかにされたが、平成19年度には、2+1次元非線形シュレーディンガー方程式を含むソリトン方程式の相似簡約によりパンルヴェV型方程式が得られることを示した。これに既知の結果(の再定式化)を合わせると、神保・三輪により与えられた6種のパンルヴェ方程式に付随する線形問題のうち、II型からVI型の5種については、2成分戸田階層の一般化である偏微分方程式系の簡約として統一的に扱えることがわかった。さらにその応用として、ランダム行列理論に現れる相関関数がパンルヴェ方程式の特殊解を与えることについてより見通しのよい別証明を与えることができることもわかる。 19年度の研究費による旅費を利用して、これら研究成果の発表を行ううちに、この結果はさらに多くの系まで拡張できるのではないかという示唆を多くうけた。特に合流操作により得られる10種のモノドロミー保存系や2変数ガルニエ系といった、ソリトン方程式との関連が明らかでないような系との対応が分かる可能性があるので、その研究を開始した。
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