研究概要 |
19年度に得られた,SL(2,R)に関係する可解群の作用の分類に関する結果の証明を改良することで,当時からの懸案であったこれらの作用の柔軟性を証明することに成功した.その証明は,ポテンシャルに対するギブス測度のある種の滑らかな依存性に基づくもので,力学系理論の観点も興味深いものである.さらに,作用の持つ柔軟性を示すのみならず,存在する作用をすべて含む普遍族の構成というSL(2,R)上の可解群の作用に関する最終的な結果をも得ることができた.証明の改良の過程で,実解析的な非等質的作用の存在を証明することにも成功した.これらの結果とは別に,等質的な作用に対してその無限小変形の空間を松元-三松による軌道葉層のコホモロジーの計算を用いることで決定し,その次元が上で構成した普遍変形族の空間の次元と一致することを確認することができた.これらの一連の結果の一部は現在投稿中である. 前年度に示した高次元階数1リー群に関わる可解群の作用の局所剛性の結果をふまえ,作用の無限小変形に関する剛性の証明を目指したが,無限小変形の空間の計算において,SL(2,R)の場合とは異なる困難が見つかり,残念ながら完成にはいたらなかった.また,軌道葉層の剛性問題についても問題の解決にはいたらなかった.しかし,軌道葉層の無限小変形についての剛性については,Kononenkoらの結果を参考にすることで,いくつかの手がかりをえることができた. 前年度や本年度に得られた結果について,日本数学会秋期総合分科会などの国内の研究集会で講演し,好評を得た.
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