量子力学に現われる波動方程式、非線形ディラック方程式およびディラック・クライン・ゴルドン方程式の初期値問題の適切性を研究した。ここで微分方程式の初期値問題の適切性とは、(1)解の存在性、(2)解の一意性、(3)解の初期値に対する連続依存性の三つの性質のことである。 2次の非線形項を持つ非線形ディラック方程式を空間1次元で考察を行った。既存の結果より低い正則度、つまりより滑らかでない解の関数に対して適切性の結論を得た。 3次の非線形項またはより一般的な非線形項を持つ非線形ディラック方程式およびディラック・クライン・ゴルドン方程式に対して空間1次元で考察を行い、ある方程式の構造に対する仮定の元での解の公式を与えた。 ディラック・クライン・ゴルドン方程式を空間1次元で考察を行った。このときの対象は前述の解の公式が適応できない。既存の結果より低い正則度で適切性の結果を得た。 各方程式の初期値問題の適切性の問題でより低い正則度での解決は近年、国内外の研究者の間で激しい競争がある。正則度の下がった数値より当然そこに至った技術開発が重要であるがBourgainのフーリエ制限定理を用いた手法はその代表といえる。本研究も部分的にその技術を用いて行っているが、そこにより対象方程式の特徴を反映させたことが成功の鍵であり、これからの後続の研究に対する影響を考えると重要性があると考える。
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