研究概要 |
19年度は,ホインの微分方程式や関連する微分方程式におけるモノドロミーに関して結果を得た。報告者はここ数年有限帯ポテンシャルやHermite-Krichever仮説法をホインの微分方程式や関連する微分方程式に対して適用し発展させているが,「On the Heun equation」において,これらの結果をとりまとめた。とりわけ,スペクトルバンドの端点におけるモノドロミーの明示的表示について新たな結果を得た。また,「Finite-gap potential, Heun's differential equation and WKB analysis」においては,ホインの微分方程式に対して有限帯ポテンシャルの方法とは別にWKB解析による方法について考察し,2つの方法の類似点・相違点について考察した。 また,報告者はmath.CA/0501428にて,モノドロミー保存変形でパンルベ方程式を生み出す線形微分方程式を含むような微分方程式たちに対してHermite-Krichever仮説法などの手法が適用できることを示し,パンルベ方程式のヒッチンの解を含むような解たちを導出した。ここでのパンルベ方程式を生み出す線形微分方程式は,単独二階微分方程式としてはホインの微分方程式に見かけの特異点を一つ加えたものであり,連立一階微分方程式としては4点に確定特異点をもつものとなっている。19年度は,Filipuk・原岡らによるMiddle convolutionの結果をさらに発展させ,一つの応用としてパンルベ方程式のピカールの解に対応する連立一階微分方程式について解の積分表示を得ることに成功し,モノドロミー保存変形によってピカールの解が復元されることを示した。この結果やMiddle convolution・モノドロミー・ホインの微分方程式にまたがる結果の一部については,日本数学会にて発表を行った。
|