本年度の研究は、昨年度の成果の発表および次なる目標への準備に主眼を置いて進めることとなった。 まず、昨年度に得ることができた、余作用に関する誘導作用の理論については、研究集会の発表以外にも雑誌論文の別刷りを研究者に配布し、様々な研究集会で交流を図ることができた。そこでの議論によって、リー群などの具体的な対象に対する理論の構築可能性を見出すことができ、今後も引き続き研究を続ける予定である。 次に、本研究の最終目標である一般の量子群の作用に対する双対作用の解析については、各方面の研究者との議論を進めることができた。そこで判明したことは、余作用で得た理論を量子群の作用に適用できるようになるまでには、多くの課題が残されていることである。その理由の1つとして、余作用における議論が「群構造」を用いて展開されているためである。この議論をより一般化したものに適用するためには、余作用で既に得られた議論を見直して、量子群的観点から再構築する必要があると考えられる。そうした観点から今後の研究を続ける必要があると思われる。 更に、カルタン部分環に関わる余作用に関連して、本研究に深く関与している離散同値関係自体の研究においては、ヘッケ環の理論を同値関係の視点から構築することに成功した。これは、ヘッケ環がフォンノイマン環の世界においては相対可換子環として実現されていることを示すものである。現時点では、その成果を発表するための準備を進めている段階である。
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