本研究の主目的は、非線形拡散方程式における進行波と界面のダイナミクスを数学的に理解することである。界面とは、二つの違った状態を隔てる空間的な局在構造であり、散逸系における空間パターンの力学的な振る舞いを理解するために従来より研究が重ねられてきた。進行波は一定の形状を保ちながら一定速度で動いていく特殊解である。この特殊解は界面の基になるもので、実際に界面は局所的にはこの解で近似できることが多い。本年度は、拡散の効果が確率分布との合成積で表される非線形方程式の進行波解について研究した。具体的な成果は、1.単安定な非線形項を持つ非局所拡散方程式における進行波解の構造について研究した。古典的な単安定拡散方程式の場合と同様に、最小速度が存在すること、及び、最小速度以上の任意の速度の単調な空間形状を持つ進行波解が存在すること、さらに、進行波解の最小速度と時間周期的な進行波解の最小平均速度は同一となることを示した。証明の際には、順序保存的であること、空間1次元系であること、平行移動不変性などの系の特徴を利用した。2.双安定な非線形項を持つ非局所拡散方程式における進行波解の存在について研究した。古典的な単安定拡散方程式の場合と同様に、単調な空間形状を持つ進行波解の存在を示した。証明では、平行移動不変性を壊すように摂動を加えた系を考え、その摂動系での定常解を順序保存性を利用して構成した後、その定常解の適当な極限として元の系の進行波解を捉えた。この手法は様々な系での進行波解の構成に利用できるものと期待できる。
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