衝突銀河団での磁場構造の進化を調べるためにN体+電磁流体シミュレーションを行った。その結果、いくつかの特徴的な磁場構造が出現することを明らかにした。例えば、接触不連続面に沿った磁場構造、サブストラクチャー背後に現れる整った磁場構造、ケルヴィン-ヘルムホルツ不安定性によって引き起こされる渦状の磁場構造などである。これらの構造は宇宙マイクロ波背景放射の偏光観測によって観測できる可能性があり、銀河団磁場のみならず、ガスの運動状態への新たなプローブになる可能性があることを指摘した。この結果はTakizawa(2008)として、Astrophysical Journalに発表された。 銀河団衝突が質量評価に与える影響について、N体+流体シミュレーションのデータを用いて評価した。その結果、銀河の速度分散を用いる方法は観測方向による依存性が相対的に高くなること、特に衝突軸方向から観測すると、重力レンズとX線で大きな食い違いが予想されることなどを示した。この結果はすでに論文にまとめられ、Astrophysical Journalへ投稿中である。 衝突銀河団だと考えられていたOphiuchus銀河団を「すざく」衛星で観測し、高温ガスの温度、重元素、視線速度分布を調べた。また、非熱的硬X線の上限値を得た。その結果、この銀河団は衝突銀河団というよりはむしろ典型的な冷却コア銀河団である可能性が高いとの結果を得た。この結果はFujita et al.(2008)としてPublications of the Astronomical Society of Japanに発表された。
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