我々の住む宇宙は、恒星の誕生と恒星内部での元素の生成、恒星の終末期における物質の星間空間への放出を通じた化学進化を経てきた。銀河系内のハロー成分には、恒星に含まれる元素量(特に鉄組成)が少ない星(金属欠乏星と呼ばれる)が存在し、銀河形成初期の情報が含まれていると考えられる。 今年度は、これまで開発中であった金属欠乏星データベースを研究者コミュニティに公開し、データとシステムの更新を行ってきた。本データベースは、金属欠乏星に関する観測論文のデータ入力を支援するシステムとデータを利用するシステムから構成される。データ利用のための検索作図システムは2008年6月24日に公開され、世界各国の多くの研究者からのアクセスを獲得している (総利用件数は公開以来20000件以上、そのうち約半数が日本国内ドメインからのアクセス、それ以外の約3割が世界35カ国の外国ドメインからのアクセス。) 。本計画に関して、データベースの概要やデータサンプルの特性についてまとめた論文が2008年10月に掲載され、本データベースを用いて議論を行った論文も数編掲載されている (論文の被引用回数は2009年4月現在5件)。 本研究の主要テーマである第一世代星の形成と起源について、銀河形成と化学進化の観点から金属欠乏星の性質を議論した論文もいくつかまとめ、宇宙初期において連星系が重要な役割を果たすことを明らかにした。また、本データベースを利用した金属欠乏星の全体論をまとめた論文も投稿中である。
|