すばるによるバリオン振動探査については、理論的検討をさらに進めた一方、実際にFMOSフロジェクトを進めている京都大学のFMOSチームとも連携をとり、試験観測に参加して計画検討会を重ねた。これらに加え、様々な系統誤差の検討を行った。たとえば、撮像サーベイにおける測光精度や、FMOSの視野形状などに起因するサーベイ領域の非一様性、FMOSにおけるOH夜光除去に伴う特定の赤方偏移の銀河の欠損などが与える影響を、現実的なシミュレーションなどをもちいて正確に見積もりつつある。銀河選択については論文としてまとめ、投稿した。宇宙ガンマ線背景放射については、GLAST衛星(フェルミと改名)がすでに打ち上げられ、データが公表され始めている中で、ブレーザー光度関数などの仕事の経験を生かし、微光天体のカウントや背景放射への寄与などの解析を通じて、特に、ガンマ線背景放射にたいするブレーザーの寄与については詳細なモデルとフェルミへの予言に関する第二論文を発表し、ジャーナルに投稿した。これとフェルミのデータの比較による新たな知見が期待できる。ガンマ線バーストに関しては、GRB 050904の成果の発展として、より初期、すなわち高赤方偏移のGRBから宇宙の電離状態を探った。特に、GRB 050904の記録を破るGRB 080913がz=6.7で発見され、申請者も日本チームを通じて解析で重要な役割を果たした。また、ライマンαエミッタと呼ばれる銀河の性質とGRB母銀河を比べる事で、ガンマ線バーストの駆動天体の性質に迫る可能性を理論的に検討した。その結果、この方法でガンマ線バースト起源天体の金属量依存性に示唆を得られる事がわかり、論文としてまとめつつある。
|