本年度は、太陽フレアを起こす活動領域の進化を特徴づける観測量をデータ解析により導出する一方、フレアに代表される太陽面活動現象の発生に中心的な役割を果たしている3次元磁気リコネクションのメカニズムを数値シミュレーションにより詳細に調査した。具体的な成果は以下のとおりである。 1) フレア活動の指標となる観測的特徴量の導出 太陽フレアはコロナ中で生じる磁場の散逸現象であるが、コロナ中の磁場を直接測定するのは困難である。本研究は、観測可能な太陽光球面における磁場分布の時間発展から、フレアを起こす活動領域の性質・進化を把握する手法を提示した。即ち、太陽観測衛星ひのでにより得られた光球面ベクトル磁場の時系列データを解析し、フレア発生へと向かう活動領域の進化を特徴づける観測量の導出に成功した。本解析により、余剰磁場エネルギーを生む磁場のねじれが活動領域の進化とともに黒点の特定の部分に集中していく一方、フレア直前には磁場のねじれが有意に減少することが確認された。本研究結果は、今後フレアの発生予測をする上で極めて有効な観測情報を提供するものである。 2) ジェット現象を可能にする3次元磁気リコネクションの磁場配位 古典的な2次元リコネクションの描像に対し、3次元空間を連続的に分布している磁場配位の下、ダイナミソクなジェット現象を可能にするリコネクションがどのように発生するか、その時間発展を数値シミュレーションにより再現し詳細な解析を行った。その結果、磁場の向きが異なる2つの領域間に磁場形状が連続的に変化する遷移領域が形成され、そこで生じる磁気リコネクションがダイナミックなプラズマ運動を可能にすることが判明した。本研究結果は、3次元磁場構造においては、強度や方向が異なる磁場領域の中間に生じる遷移領域が数々の活動現象の物理過程に重要な寄与をしていることを強く示唆している。
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