今年度はスリットレス分光画像を解析する作業工程、プログラムを構築した。具体的には以下のような処理を行った。 ・ダーク画像からの宇宙線除去・分光画像からの宇宙線除去 ・画像間のズレ補正と足し合わせ ・ローカルスカイの差し引き ・スペクトル画像の切り出し この解析法を1'×1'窓のデータ解析に適用し、正しく解析ができることを確認した。得られたスペクトルは、プロジェクト側から支給された解析プログラムを用いた場合より格段に質がよい。さらに、スペクトルから吸収プロファイル、氷の柱密度を定量的に評価するためには、スペクトルの連続波成分を決め、さらに実験室氷のスペクトルと比較する必要がある。以下の手法・プログラムを確立した。 ・色等級図から分子雲背景星のスペクトル型と減光度を推定 ・星スペクトルおよび星間減光の理論モデルを用いて連続波成分を得る ・実験室氷のスペクトルにAKARIのpoint spread functionをかけあわせ、観測で得られた吸収プロファイルと比較 この手法により、1'×1'窓のデータについて水、二酸化炭素、一酸化炭素の柱密度を求めた。得られた水、二酸化炭素の氷柱密度は星間減光度におおよそ比例することが分かった。以上の結果は国内で行われた学会や国際集会で発表し(「学会発表」参照)、会議集録も執筆中である。 4月末から5月初めにかけて、AKARIを用いた氷観測をしているスコットランドの研究者を訪ね、研究打合せを行った。またAKARIプロジェクトの一員である東京大学の左近助教を訪ね、プログラム開発に関する議論、打ち合わせを行った。
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