星間分子雲や星周エンベロープ、星周円盤など低温・高密度な領域では、酸素・炭素・窒素のかなりの量が水や二酸化炭素などの氷として存在する。これら氷物質は、気相反応で作られた分子のダスト表面への吸着、およびダスト表面での化学反応によって生成される。気相および固相での化学的素過程は温度・密度・紫外線強度などの条件に依存すると考えられる。よって星間物質の進化を解明するためには、様々な物理条件でのガスおよび氷組成の観測が重要である。気相については電波での分子輝線観測により様々な分子雲での組成分布が明らかになっている。一方、氷の組成は赤外の吸収バンドから分かる。光源となる明るい星の数が限られているため、氷組成の空間分布や物理条件依存性の解明は気相分子に比べて不十分である。赤外線観測衛星AKARIは氷バンドの観測波長において地上望遠鏡よりもはるかに高い感度を持つ。本研究では、今までは観測の難しかった分子雲背景星を数多く分光観測することによって、分子雲内での氷組成の空間分布を明らかにする。 今年度は2006年後半から2007年初めにかけて取得されたデータの解析を行った。パイプラインを用いて背景星とそのスペクトルを取りだした。検出された背景星について2MASSカタログと照合し、星の減光度やスペクトル型を決定するプログラムを作成した。その結果、水、二酸化炭素、一酸化炭素などの吸収バンドを検出した。 またclass 0からclass IIの進化段階にあるエッジオン円盤(原始惑星系円盤)についても観測・解析を行った。その結果、class 0からclass Iの段階の天体についてスペクトルが得られ、水、二酸化炭素、一酸化炭素の吸収バンドを検出した。
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