研究課題
本年度は、1.矮新星モニター観測システムの構築と、2.矮新星の可視光-近赤外線観測を並行して行った。特に「2.」に関しては、本研究に非常に重要な矮新星爆発が2007年4月と9月に相次いで発生したため、貴重な観測データを得ることに成功した。4月に爆発しに矮新星「GWLib」の観測では、爆発が終わった直後1週間の期聞だけ天体の色が非常に「赤く」なる現象を発見した。これは高温の爆発状態から低温の静穏状態に戻る過程で、一時的に静穏状態よりもさらに温度が低い状態が現れていることを意味する。この状態をさらに詳しく調べたところ、光学的に厚い、温度3000K程度の低温領域の存在が明らかになった。そのような低温成分は従来の矮新星理論では予想されていなつたものであり、アウトバーストが終わった直後ではまだ降着円盤外縁付近にある程度の量のガスが残存していることを示唆する。その残存成分が静隠時よりも高い質量降着率を実現し、それが原因となって再増光現象が発生している可能性がある。さらに、9月に爆発した「V455 And」では、研究史上初めて「early superhump」と呼ばれる短時間変動の可視光-近赤外線多色観測に成功した。その結果、これまで未知だったearly superhumpに付随した色の変化が明らかになった。得られた色変化驚くべきもので、ハンプで明るくなるときに温度は上昇せず、むしろ温度が下がった。これは低温成分の表面績が見かけ上、大きくなったことを示唆する。この天体は降着円盤をほぼ真横から観測しているため、円盤外縁付近で縱方向に伸びた構造が見えている可能性がある。このようなデータの結果を踏まえ、来年度は上記天体とは別の、より典型的な矮新星で同様の観測を行い、今年度の結果と比較したい。また、上記「1.」の開発も継続する。
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