本年度はこれまでの研究成果を論文にまとめ、発表した他、矮新星降着円盤の外縁部分の角運動量輸送過程を調べる上で必要な新たな観測や解析を行った。 1. 2007年に解析した矮新星SDSS J102146.44+234926の研究結果を論文として出版した。この研究では近赤外線でこれまで予期されていなかった大振幅の短時間変動が発見された。これは、降着円盤がアウトバースト現象と共に角運動量輸送によって広がる際に、外縁部に「質量貯め」が形成され、アウトバースト終了後に遅れて降着することを示唆した。 2. 2007年にアウトバーストした矮新星V455 Andの観測データを解析した。この天体では前例のない6波長帯同時の測光観測が得られており、これを利用してアウトバーストに伴う降着円盤の温度と放射領域の時間進化を初めて直接的に推定した。特に早期スーパーハンプと呼ばれる謎の短時間変動では、ハンプ成分の温度が比較的低いことが明らかになり、光度変動は円盤の温度変化よりも放射領域の大きさの変化が原因であることがわかった。これらの結果は日本天文学会の年会で発表した。 3. 2008年に新しく発見された矮新星OT 074727.6+065050の即時観測をおこない、再増光フェーズの貴重な測光に成功した。特に可視-近赤外線の多波長帯で観測し、色の挙動が明らかになったのは今回が初めてである。その結果、再増光期間中は降着円盤の外側や内側で熱的不安定になりやすい状態であり、単純な質量降着率の一時的な増加だけでは説明できないことがわかた。この結果は日本天文学会の年会で発表した。
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