矮新星の降着円盤を起源とする変動現象を可視光と近赤外線を同時に観測することによって初めて得られた知見を論文にまとめた。また、さらなる発展的研究として、得られたデータから降着円盤の構造を再構成するための解析技術の開発準備を行った。主な成果を以下の3点にまとめる。 1. 矮新星の増光中に初めて捉えられた赤外線変動の解析結果を論文として出版した。観測した天体は矮新星V455 Andで、広島大学かなた望遠鏡を用いて2007年の増光中に観測を行った。これまでの解析によって増光直後に円盤外縁部に低温の「質量溜め」が形成されていることを提案し、観測結果と共に論文として出版した。 2. 2006年に新しく発見された矮新星J0557+68の観測結果を論文として出版した。この天体は連星の軌道周期が非常に短く連星進化が進んだ天体と考えられるが、連星進化理論からの予想とは異なる高い活動性を発見した。本研究では同様の連星周期と活動性を示す矮新星を階層クラスター分析によって同定し、矮新星の新たな分類学的描像を提示した。 3. 矮新星降着円盤が伴星によって隠される食や早期スーパーハンプの光度曲線から、トモグラフィー技術によって円盤の構造を再構成するため、ベイズ的手法を用いた新たな解析技術の開発準備を進めた。100次元を超える多変量でのマルコフ連鎖モンテカルロを扱うために、かなた望遠鏡で撮られたブレーザーの偏光データを使った偏光成分の分離モデルを開発した。これによって手法のノウハウ得ることができ、降着円盤の構造解析への応用準備ができた。
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