狭輝線Seyfert1とは、広幅輝線が約2000km/s以下と比較的小さい線幅を持つ活動銀河中心核である。その特徴として、X線のスペクトルが通常のSeyfert銀河よりソフト(低エネルギーでの放射が卓越)である事、その光度変化のタイムスケールが比較的短い事等が挙げられる。これらの性質は、狭輝線Seyfert1の中心に存在するブラックホールの質量が比較的小さく、ブラックホールへの質量降着率が大きいと説明可能であり、急速に成長しつつあるブラックホールを持つ系だという見方が有力である。つまり、狭輝線Seyfert1が急速な成長途上にあるブラックホールで、ごく最近質量降着がトリガーされたばかりの(つまり若い)銀河核であるというシナリオです。 我々はこのシナリオを確かめるため、狭輝線Seyfert1に付随する分子ガスに着目した。分子ガスは今後の星形成のための材料であり、この量や分布から、これからの星形成活動、つまり狭輝線Seyfert1母銀河の今後の進化・成長を考察できるからです。そこで、野辺山宇宙電波観測所の電波干渉計を用い、これまで分子ガス観測が行われていない狭輝線Seyfert1銀河の2天体を観測しました。その結果、太陽質量の10億から30億倍もの大量の分子ガスがこれらに存在し、今後この狭輝線Seyfert1の母銀河が成長する量に初めて制限を与えることができました。
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