本研究の目的は、銀河系中心領域の近赤外線偏光観測により磁場構造を解明することにある。 この領域の観測が可視光ではなく赤外線でなければならない理由は、銀河円盤にある星間塵による減光により可視光が届かないからである。本研究の基礎的な段階として、可視光に比べて赤外線ではどれくらい減光が小さくなるのか、という値を正確に知る必要がある。銀河系中心方向の可視光と近赤外線の星のカタログを用い、両方で検出された星の明るさを比較することで減光の大きさの比を得ることができた。(論文はThe Astrophysical Journalに受理された。) さらに、南アフリカ天文台にあるIRSF望遠鏡を用いて、本題である近赤外線偏光観測を行った。晴天率が例年より低かったため、当初の目標である5平方度には届かなかったものの、4.5平方度にわたる領域を観測することができた。 これらの観測データの中から、まず中心20分角の領域を用いて、銀河系中心部の磁場構造を取り出すことができるかを検討し、成功した。(成果は2007年秋の天文学会で発表し、投稿論文としてまとめている。)解析では、銀河系バルジに存在する星をその色によって手前の星と奥とに分類し、その偏光の差を取り出す、という手法を用いた。この差は、銀河系の中心部での偏光によって生じるものである。結果は、銀河面に平行な磁場構造が銀河系中心部において支配的である、というものであった。近赤外線の偏光を用いて銀河系中心部の磁場構造を調べた世界で初めての研究である。
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