研究概要 |
本研究は、宇宙最大の天体である銀河団に含まれる高温ガスの詳細なX線分光から、銀河団のダイナミックな進化を解明することを目指している。本年度は、主に「すざく」衛星で取得した高温銀河団のデータ解析から(1) 銀河団中のガス運動探査や(2) ガス温度構造の測定を行った。(1) まず、銀河団ガス中に接触不連続面(コールドフロント)をもつ天体として代表的なA2142銀河団については、鉄輝線ドップラーシフトから大小2つのコアの相対視線速度の測定を行った。その結果有意な信号は見られなかったが、過去最高の精度で視線速度差の上限値を求めることができた。一方、強い電波ハロー放射を持つ衝突銀河団A3667については、その中心領域に音速以上のガス運動が存在している兆候を初めて見いだした。これらの成果について現在投稿論文を準備中である。(2) 国際会議において、「すざく」衛星によるRXJ1347銀河団中の超高温ガスの研究成果について口頭発表を行った。さらに超高温ガスの探査を進めるため、複数の高温銀河団(A2163, A2219, A2390)について広帯域X線分光データを利用して温度構造の解析を行った。また最近の銀河団サーベイから見つかった高赤方偏移の3つの高温銀河団についても、新たにX線データを取得しガス温度や光度を決定した。以上に加えて、将来計画、特にAstro-Hミッションに向けた銀河団高分解能分光の観測シミュレーションを行い、ガス乱流の検出可能性と銀河団質量を用いた宇宙論への制限について議論を行った。
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