研究課題
ブラックホール(BH)は物質を降着する過程でX線ガンマ線を放出し、静止エネルギーの最大10%(非回転BH)ものエネルギーを宇宙空間に放出する。同時に、X線スペクトルに観測される高電離の共鳴吸収線の観測からBHにおけるエネルギー解放機構には放射に加えて、質量放出が重要な役割を担うことが明らかになりつつある。こうした状況をふまえ、本研究は、「すざく」衛星によるBHの広帯域X線ガンマ線スペクトル観測とモデル計算を行い、放射と質量放出によるエネルギー解放バランスを明らかにすることを目指している。本年度は、イギリスのC.DoneかおよびM.Gierlinskiと共同でBHからのX線放射に関するレビュー論文をAstronomy and Astrophysics Reviewに招待論文として寄稿した。本論文では、観測される降着円盤からの軟X線放射、高温および非熱的コロナからの硬X線放射を理論描像と照らしあわせ、その放射機構を解いた。またこれと並行して、「すざく」衛星のサイエンスワーキンググループで観測した恒星質量BH、GRO J1655-40、Cygnus X-1の解析をすすめ、査続付き論文として共著で出版および投稿した。本論文によって硬X線放射の詳細を理解するとともに、「すざく」衛星搭載の硬X線検出器による解析手法の道筋がたてられた。さらに、恒星質量BHから超巨大質量BHへの進化を理解する上で重要な、近傍銀河の超光度天体について、「すざく」衛星による観測データの解析を進めている(NGC4945という銀河の超光度天体については共著として出版)。
すべて 2008 2007
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件)
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Proceedings of IAU Symposium #238, Cambridge, UK: Cambridge University Press,
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