「あかり」衛星によって取得した、近傍楕円銀河の遠赤外線撮像データの解析を行った。とくに、遠赤外線検出器の過渡応答補正モデルをいくつかの近傍銀河データに適用し、画像の質を向上させることに成功した。また、米国Spitzer衛星によって、近傍楕円銀河の中間赤外線分光マッピング観測を行い、巨大有機分子である多環芳香族炭化水素PAHの空間分布を得ることに成功した。そして、「あかり」によって求めた遠赤外線ダストの空間分布と、Spitzer衛星によって求めたPAHの空間分布を詳細に比較した。その結果、PAHと遠赤外線ダストの空間分布がとても良く似ていることを発見した。一方、両分布ともに、星の分布とは大きく異なっていることが分かった。これは、これまで考えられていた、星の質量放出がダストやPAHの支配的な起源であるという説を否定するものである。とくに、一般的なサブミクロンサイズのダストよりさらに小さなナノサイズの粒子であるPAHが、楕円銀河の星間プラズマ中で壊されずに存在することは驚きであった。本研究によって、楕円銀河におけるダストとPAHの起源、および楕円銀河の進化そのものについて強い制限を得た。 本研究で開発した遠赤外線過渡応答データ処理方法については、米国の投稿雑誌"Publications of the Astronomical Society of the Pacific (PASP)"で発表した。また、「あかり」遠赤外線観測による近傍銀河の星間ダスト研究の成果については、米国の投稿雑誌"Astrophysical Journal"や欧州の投稿雑誌"Advances in Space Research"で発表した。ブラジルで行われた国際天文連合(IAU)総会や、インドで行われた星間物質に関する国際シンポジウムで、本研究の「あかり」の成果に関して講演を行った(後者は招待講演)。さらに、「あかり」とSpitzer衛星の中間・遠赤外線衛星データを組み合わせて得た上記の成果についても論文を完成させ、"Astrophysical Journal"に投稿した。
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