昨年までの研究により、カムランドの原子炉ニュートリノ、地球ニュートリノ解析において5.5MeV以下で32%、5.5MeV以上で100%と見積もられていたC13原子核の(α、n)バックグラウンド事象の誤差を、それぞれ11%、20%と改善する事に成功した。本年度はこの結果を元に、ニュートリノ振動パラメーターの精密測定に成功し、△m^2_{12}=7.58^{+0.14}_{-0.13}(stat)^{+0.15}_{-0.15}(syst)×10^{-5}eV^2、tan2θ_{12}=0.56^{+0.10}_{-0.07}(stat)^{+0.10}_{-0.06}(syst)を得た。 また、昨年度、今年度に行った液体シンチレーターの純化により、α線を発する^{210}Poの元となる^{210}Pbの大幅な削減に成功し、原子炉ニュートリノ、地球ニュートリノのバックグラウンド源を除去する事に成功した。これにより、特に地球ニュートリノの精密測定への道が切り開かれた。 現在純化中の観測データを解析中であるが、純化中に混入した微量な^{222}Rn、^{220}Rn、その娘核が発するα線が、^{210}Poが発するα線より高エネルギーであるため、(α、n)反応によって生成された^{16}0の第3、第4励起状態からのγ線事象を正確に見積もる必要がある。この事象の振る舞い、^{222}Rn、^{220}Rnの混入量の正確な見積もり、^{210}Po量の正確な見積もりが進行中であるが、この解析結果を元に、純化中、および純化後の原子炉ニュートリノ、地球ニュートリノの精密観測へつなげる予定である。
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