この研究では、将来の超大型液体シンチレーション検出器を想定して、その内部で多発する放射線起源バックグランド事象を判別削減する新しいトリガ構成を開発する。空間的に広く分散し明確なセグメント構造を持たないシンチレータ検出器において、その内部で同時多発する事象を識別し選別するための方法として、場の時間発展のアナロジーを用いることを試みる。具体的には、全チャンネルを均等に緩く結合し、その系の上になんらかの量を伝達させて、局所的に時間発展を測定することにより全体の初期状態に関する情報を得る、という方法である。現実にはセンサ間を特定の応答を持った電子回路ネットワークで接続して系を構成し、ディジタイザでその時間発展を計測する。 前年度のセンサ間接続のアナログ回路系の開発に引き続き、今年度はその時間発展を計測するディジタイザ部分およびその結果を解析するディジタル回路の研究を行った。この目的のためには、高速かつ高精度でアナログ信号をサンプリングし、連続実時間処理でそのデータを解析するようなシステムが必要になる。今回は1GSPSの高速フラッシユADCと3つの200MSPSフラッシュADCを並列動作させ、そのデータを連続的にFPGAで前処理し、さらに大容量メモリと組み込みプロセッサで高度な解析を行える基板MoGURAを開発した。また、それと連動し、局所的情報を集めて全体の制御を行う基板も開発した。最後に、これらを用いてリアルタイム信号処理の原理検証、動作確認および性能評価を行った。
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