原子炉反ニュートリノの精密測定手法の開発の一環として、液体シンチレータ中の逆β崩壊反応に伴う微弱光精密測定に関する研究を進めた。今年度は、特にイメージング観測において必要不可欠な集光系に着目して検討を行った。 6Li含有液体シンチレータを利用する反ニュートリノ飛来方向検出では発光位置の直接測定の精度が重要な要素となる。特に、大容量標的の場合にはニュートリノ事象の逆β崩壊反応に伴う数十μ秒間隔の先発信号・後発信号の発光位置の3次元情報を2次元情報に分離・撮像する集光系の性能が最大の問題点となりうる。レンズの光学的特性から制約を受ける被写界深度の最適化を光学計算をもとに行った。魚眼レンズ、レンズアレイ(フライアイレンズ)、大被写界深度の接写撮影(虫の目レンズ)等の光学レンズで比較を行ったが、被写界深度を大きくするために光学的に必要とされる短焦点・小口径のレンズによる遠距離から観測という要請から、被写界深度を確保しつつ受光面積を確保するために多数の検出器を必要とする結果となった。また、複数カメラによる撮像画像の発光点の2次元座標から3次元座標を再現するために必要なカメラパラメータのキャリブレーションを、像面への射影方式が固定されていてデータの扱いやすい等立体角射影方式の魚眼レンズ(焦点距離4.5mm、F2.8)をテストケースとして実施した。 また、集光系で変換された2次元情報を取得する撮像系(2次元検出器)の可能性を検討した。原子炉反ニュートリノの検出信号では検出器あたりの入射光は単一光子レベルになると予測されているため、発光点位置を再構成するには撮像画面上の暗計数の抑制が不可欠であり、そのために光電面や半導体素子の冷却が必須となる可能性がある。昨年度とは異なる大光電面積の電子冷却型PMTをモデルケースとして、Rb原子を標的としてナノ秒パルスレーザによる蛍光時間分布、蛍光波長分布の測定を実施した。 これらの結果から、まずは1m^<3>程度以下の小規模サイズでの検証実験の可能性が期待される。
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