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格子QCDを用いることにより、中性子が持つ電気双極子モーメント(NEDM)を第一原理計算から求めることを目的とする。NEDMはQCDの真空が非自明なトポロジーを持つことによって生じるCP対称性の破れを示し、素粒子標準模型を超えた物理現象の説明が求められる。本研究で求められる値から、QCDに新しく導入されるθパラメータの値に制限を課すこと繋がり、新しい物理を記述する数あるモデルの選別に重要な情報を与えることになる。
平成21年度ではフレーバー数2の動的クォークを含んだフルQCD計算の更なる精度向上を図るために、形状因子を用いたNEDMの計算を行った。動的クォークにはCP-PACSが生成して公開している、動的ウィルソンフェルミオンを含むゲージ配位を用いた。この方法では3点関数を計算して、演算子間の時間方向を延ばしていき中性子の漸近状態をとることができる。その行列要素から電磁形状因子を抜き出す。π中間子の質量は900～500MeVで計算を行い、ゼロ運動量の極限をとることによって各クォーク質量におけるNEDMを計算した。得られた詳細なNEDMのクォーク質量依存性から、以前の外電場を用いた計算と比べてコンシステントでかっ高精度の結果を示した。ただし、クォーク質量が重いため、カイラル極限ではクエンチ近似とあまり差のない結果であった。今後の課題として、最近新しく生成された、より現実的なゲージ配位を用いて計算を行い、予想されるゼロ質量近傍の詳細な振舞を調べる必要がある。
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