本年度は、主にブレーンタイリングについての研究を行った。ブレーンタイリングはIIB型超弦理論におけるブレーン系であり、広いクラスの4次元N=1超対称ゲージ理論を実現することができる。現象論的なモデルの構成などへの応用にはオリエンティフォールドプレーンやフレーバーブレーンと呼ばれるものを導入することにより拡張したブレーンタイリングが必要となるが、そのようなブレーン系の構造はこれまであまり調べられていなかった。私はこれらの拡張を行ったブレーン系がどのような構造を持っているのかを明らかにした。それにより、ゲージ理論におけるゲージアノマリーの相殺条件がブレーン系のブレーンチャージの保存則として現れることがわかった。このことは、ブレーンを用いて無矛盾なゲージ理論を構成するために必ず考慮しなければならない点であり重要である。また、フレーバーブレーンを導入したときにそこから新たな場が現れるが、その場に対する相互作用を与える超ポテンシャルを構成し、Calabi-Yau空間との双対性から要求される性質を満足すること、すなわち、クオークが零質量になるようなモジュライ空間中の部分空間がCalabi-Yau空間上でフレーバーブレーンが巻きついた部分空間を与えるということを示した。 また、これとは別に、ブレーンと弦の相互作用という基本的問題についての研究を行い、超弦理論における交差したブレーンにおいて、片方のブレーンからもう片方のブレーン上の開弦の放出、吸収を記述する開弦境界状態の構成法を確立した。これは将来ブレーン系を用いて構成したゲージ理論における相互作用やソリトンの性質などの解析において重要な役割を果たすと期待される。
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