水チェレンコフ型ニュートリノ検出器であるスーパーカミオカンデは壁面に取り付けた1万個以上の光電子増倍管で捕えたチェレンコフ光の強度と時間情報をもとにニュートリノ反応を再構成する。各増倍管の時間測定性能は特にスーパーカミオカンデの有効体積の決定精度に直結し、平成21年にビーム照射を開始するT2K実験に先立って徹底的に時間測定性能を高めておくことは大変重要である。 本研究では、平成19年度には過去の時間補正作業において見つかった時間補正作業のための光源の上下非対称性を極力少なくするため、水中に設置する散乱球を作り直し、非常に対称性の良い光源であることを確認た。また散乱球を水中で支持する治具を作り直し、精度良くタンク内に設置できるようにした。その上でこれらのシステムを用いて時間補正作業を行った。また、精密な時間補正のためには水中での光の散乱が少ないとはいえ影響をするので、この影響が最小になるように解析のソフトウェアを改良した。 また、上記の作業により精密時間補正が行えるようになった結果、補正用のレーザー光の発射時間の測定精度がさらなる精密測定の際には影響してくることが判明した。このため、発射時間の測定を精度よく行えるよう、応答速度が光電子増倍管よりも高速な光電管と、読み出し用のエレクトロニクスを準備し、平成20年度に予定している更なる精密時間補正作業で用いられるようにした。
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