X線バーストや超新星における元素合成過程「rp-process(速い陽子捕獲反応過程)」において、陽子過剰なpf-shell核領域の原子核は重要な役割を果たす。こういった元素合成に関わる原子核の生成過程(陽子・中性子捕獲)の反応率や、崩壊過程(電子捕獲やβ崩壊)の半減期などは、宇宙の元素組成の起源を知るための重要な研究対象であり、天文学的に大変興味深い。 本研究では、rp-processに関わる原子核の一つである46Crのβ+崩壊の半減期と分岐比を精度良く決定することを目的としており、平成20年度に、東大CNSが所有するCRIB施設において、核融合反応を用いて46Crを生成し、半減期と分岐比を測定する実験を行った。 当該年度においては、行った実験のデータ解析を行い、46Crのβ+崩壊の半減期と分岐比を求めた。また、過去に報告されている値との比較を行った。 報告されている半減期は、260(60)ms・240(100)msと誤差が20%程度と大きいが、現時点までの解析において、266(16)msと誤差が6%程度と、精度の良い値を得ている。また、分岐比においては、誤差は大きいが、3.8(1.9)%と値を得ており、過去に報告されている値(21.6(5.0)%)と大きく違うことを示した。これらは、元素合成の理解のための貴重なデータになるであろう。これらの結果は、日米物理学会合同核物理分科会において、口頭発表を行った。現在、投稿に向け、解析・議論を進めている。
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