私は、B^0→π^0π^0崩壊において、π^0が崩壊してできるγ線がシリコン検出器内で電子対生成を起こす場合、B^0の崩壊位置を決定し、CPの破れを測定することにより、CP非保存角φ_2を不定性無しに測定することができることを指摘した。本年度はこのアイディアが原理的に正しいかどうかを確認する仕事にあたった。 まずモンテカルロシミュレーションにより、Bファクトリー実験(Belle実験)において、B^0→π^0π^0の崩壊位置を決定することができる効率とその精度を求めた。 B^0の崩壊位置を再構成するアルゴリズムを考案し、それに必要な情報をDSTファイルに残すよう工夫した。その結果、B^0→π^0π^0の崩壊位置を測定することが原理的に可能であることを示すことができた。 B^0→π^0π^0の分岐比が低いために、現存するデータからでは、統計が足りずCPの破れは測ることができない。そこでB→Dπ^0崩壊を用いることにより、実データで原理検証を行った。その結果、データとモンテカルロシミュレーションの予言はほぼ一致し、原理検証に成功した。 また本年には、B^0→π^+π^-のCPの破れを測定し、直接的CPの破れを世界で初めて見つけることができ、論文を出版した。
|