研究概要 |
本申請課題の目的は、陽子数が Z=8 で中性子数が N=16 のドリップ線(原子核の存在限界を規定する境界線)上の中性子過剰核<24>_Oと、それよりも中性子が一つ少ない<23>_0核の励起準位を、不変質量法を用いて探索・発見し、酸素同位体における中性子数 N=16のシェルギャップに関する知見を得、中性子ドリップ線近傍領域における新しい魔法数 N=16 の存在を明らかにすることである。 本年度は、理化学研究所リングサイクロトロン加速器施設の重イオン二次ビーム発生装置を用いた逆運動学条件下での陽子非弾性散乱実験を実施するに先立ち、二種類の粒子検出器を制作した。ひとつは標的上流に設置する重イオン飛跡検出器である。縦横方向に複数本のワイヤーを配置することで有感領域(96×96mm^2)を細分化し高ビームレート耐性を確保するとともに、イオン化電子がアノードワイヤに到達する時刻を計測するドリフトチェンバー方式を採用することにより、高い検出位置分解能(〜70μm)を達成可能な仕様とした。他方は標的下流に設置し電離損失量の測定により重粒子の電荷を識別するプラスチックホドスコープ(450×700 mm^2)である。70 MeV/核子程度の酸素同位体を近傍元素と区別できるよう厚さを5mmとした。装置の制作と並行して理論解析法の検討も進めた。陽子非弾性散乱断面積の解析には歪曲波ボルン近似(DWBA)計算を用いる予定である。DWBA計算の入力パラメータである入射粒子-核内核子間有効相互作用、核遷移密度、及び核子-核間光学ポテンシャルとして、旧来より様々なものが提唱されているが、それらを個々に検討し妥当な組み合わせを探った。この作業の一環として、<19>,<17>^C(P,P')反応に関する既得データと DWBA 計算値との比較・検討を行い、<19>,<17>^C核において新たに見出された共鳴準位についての知見と合わせて結果を出版した。
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