助教 クォーク・グルーオンプラズマ(QGP)相、ハドロン相の相転移機構とQGP状態の理解は素粒子・原子核理論における重要な課題である。現在、QGP状態の発見、QCD相転移機構の理解に向けて、理論・実験の両側面からの研究が精力的になされている。2000年より稼働しているブルックヘブン国立研究所の衝突型加速器、Relativistic Heavy Ion Collider(RHIC)で得られた大きな成果の一つは、強相関QGP状態の生成の成功である。これは我々の相対論的流体模型、リコンビネーション模型のRHIC物理理解への成功が大きい。相対論的流体模型は重イオン衝突実験のダイナミクスを記述できる唯一の現実的な模型として、非常に注目を集めその重要性がますます高まっている。平成20年度はこの相対論的流体模型を軸に、媒質(相対論的流体模型)とジェットの相互作用における様々なエネルギー損失メカニズムのシスティマティックな比較を行った。さらにジェットにより媒質中にマッハコーンが形成されているという過程のもとで定量的な実験の検証を行っているところである。さらにQCD相転移機構理解の鍵をにぎるQCDクリティカルポイントについて、現在存在する実験結果から議論を進め、その発見につながるクリアな物理量を発見した。さらにこの状態方程式を相対論的流体模型に取り込み、実験への定量的な提言を目標に研究が進行中である。有限温度のハドロンの性質からQCD相転移機構の解明を目指す。2007年終わりから名古屋大学(野中)、大阪大学(浅川)、広島大学(志垣)と定期的な研究会(Heavy Ion Pub)を開催している。
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