11次元時空をもつM理論はII型超弦理論の強結合極限として実現されると考えられ、その理解が超弦理論の理解においても非常に重要である。M理論、特に、その拡張された幾何学的な性質を調べるに当たって、最近提案されたM理論中のM2ブレーンと呼ばれる膜状の物体を記述する有効理論が重要である。このM2ブレーンの理論は、ある極限においてDブレーン理論となるので、後者の非可換性をM理論の立場で拡張したものになっているはずである。実際、このM2ブレーンの理論は、通常のゲージ理論におけるリー代数ではなく、3代数と呼ばれる代数構造が背後にあると信じられている。リー代数は、二つの元の交換子で決まり、一般に可換でないことから非可換性が出現するが、3代数の場合は、三つの元から一つの元への写像で決まるので、非可換時空の何らかの意味の拡張が存在することが予想される。私は、基礎物理学研究所の八木氏とともに、M2ブレーンの有効理論から、M5ブレーンを構成した。この時、背後にある3代数が解の存在を示すのに必要であり、また、3代数のとる値が、M5ブレーン上のフラックスと同定できることを示した。これは、3代数がM5ブレーンの理論においても重要な役割を果たすことを示唆し、非常に興味深い結果であると考えている。
|