超弦理論中のDブレーンは、理論の結合定数を大きくする極限で11次元時空を持つM理論中のM2ブレーン、または、M5ブレーンと同一のものになることがある。逆に、有限の大きさの空間の中のM2ブレーンやM5ブレーンは、Dブレーンと同じものになる。しかも、M理論では超弦理論やDブレーンの様々な性質が統一的に記述されることが期待されている。M理論、特に、その拡張された幾何学的な性質を調べるに当たって、最近提案されたM理論中のM2ブレーンと呼ばれる膜状の物体を記述する有効理論が重要である。このM2ブレーンの理論は、ある極限においてDブレーン理論となるので、後者の非可換性をM理論の立場で拡張したものになっているはずである。実際、このM2ブレーンの理論は、通常のゲージ理論におけるリー代数ではなく、三つの元から一つの元への写像で決まる3代数と呼ばれる代数構造が背後にあると信じられている。私は、八木氏とともに、M2ブレーンの有効理論から、M5ブレーン解を構成し、その解のまわりで場を展開することでM5ブレーン上の有効理論を得た。その有効理論は結合定数が空間的に変化するD4ブレーンの形をとる。これはD4ブレーン上の理論を非摂動的に扱えばM5ブレーンを記述できる事を示唆し、非常に興味深い結果であると考えている。また、畔柳氏、小川氏とともに、3次元AdS空間が臨界ブラックホールのゼロエントロピー極限で現れることを示した。これは、臨界ブラックホールにおける重力の量子論を考えるうえで重要である。
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