古典的な重力理論である一般相対性理論では時空そのものが物質によって変化する。そこで、時空を変化させることができる幾何学が必要になり、リーマン幾何が重要な役割を果たす。しかし、ブラックホールや宇宙初期といった極限的な状況では量子論的な効果が重要になり、『古典的』なリーマン幾何を基礎とする一般相対論が破綻すると考えられる。この量子論的な重力理論では、時空の不確定性を取り入れたリーマン幾何に代わる新しい幾何学が存在し、それを基礎として量子重力理論が構築されることが予想できる。そこで、私は次のような問題を解決することを本研究の大きな目標とする:「リーマン幾何に代わる、量子化された重力理論における「幾何」は何か?」。この問題を考えるにあたり、私が着目するのは超弦理論、特に超弦理論に存在するDブレーン呼ばれる超弦理論に存在する空間的に広がった物体である。このDブレーン上の理論は重力を含まないにも関わらず、Dブレーンを調べることで量子化された重力を理解できることが明らかになりつつある。そこで、本研究では、超弦理論中のDブレーンを調べることによって、量子化された重力に本質的な幾何学を構築する事を目的とする。
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