本研究では原子核を構成する核子の間の相互作用である核力と核子多体系である原子核の多様な振る舞いの関係を明らかにすることを目指している。特に核力に特徴的である非中心力の役割に着目して研究を行っている。また、陽子と中性子とからなる通常の原子核だけでなくストレンジネスを持った粒子であるΛ粒子やΞ粒子が入った原子核、ハイパー核の構造に対し非中心力がどのような影響を及ぼすかについても研究を行う予定である。そして、まだ良く分からない部分が多いハイペロン-核子間、ハイペロン-ハイペロン間の相互作用についての情報を非中心力まで含めて実験データから引き出すことを目指しいている。 今年度は非中心力であるテンソルカ、LS力が原子核の単一粒子軌道のスピン・軌道スプリッティングにどのような影響を及ぼすかをハートリー・フォック計算を行うことによって調べた。原子核の構造においてスピン・軌道スプリッティングは原子核に特徴的な魔法数を生み出すとことから非常に重要なものである。原子核におけるスピン・軌道スプリッティングに対してはLS力だけでなく、テンソルカも重要な役割をしているということが古くから議論されてきた。近年、通常の安定な原子核に比べて中性子数(陽子数)が大きい原子核である中性子(陽子)過剰核の研究が精力的に行われており、中性子過剰核においてスピン・軌道スプリッティングが安定核と比べてどのように変化するかは興味ある問題のひとつである。そこで、最近実験データで陽子の単一粒子軌道的な状態が同定された中性子過剰核である23Fについてハートリー・フォック計算を行った。その結果余剰中性子と陽子の間に働くテンソルカがスピン・軌道スプリッティングを狭める働きをしており、その効果が実験データを説明するためには重要になってくることを見出した。
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