超弦理論は重力の量子論的側面を記述する理論として注目されている。特に低エネルギー領域では超弦理論は超重力理論によって近似され、ブラックホールを古典解として記述することができる。しかしながら、曲率が大きくなると古典的解析は信用できなくなり、超弦理論の量子効果が重要になる。このとき超弦理論の有効理論はもはや超重力理論ではなく、さらに高次微分の補正項が入った理論になる。この補正に関しては現在のところ完全には導出されていない。私はこの補正項の形をプログラムを組んで完全に決定する研究を行い、その有効作用を解析してブラックホールの重力解に関する補正を研究した。 この研究を実行するに際して私は超弦理論あるいはM理論が持つ局所超対称性を最大限に利用する手法をとった。M理論とは11次元時空で構成される理論であり、その低エネルギー有効理論は11次元超重力理論で記述される。具体的にはネターの手法を用いて、局所超対称性を保つように高次微分の補正項を付け加えたのである。この作業を遂行するには莫大な計算量が必要であったため、この難点を回避するべく私はマセマティカによる代数計算のプログラムを構築した。結果としてリーマンテンソルの4乗項を超対称性によって一意的に決定することができた。 近年超対称性を最大限に保つ超重力理論が紫外領域で有限であるかどうかの議論が盛んになされているが、私の研究は超対称性を最大限に活用すればその補正項が一意的に求まることを示唆している。
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