平成19年度はまず主にインフラトン場の揺らぎと他のスカラー場(例えばモジュライ場など)の揺らぎの両方が現在の宇宙背景放射の揺らぎなどに影響するようなカーヴァトンシナリオについておいて、非ガウシアン性に着目し、研究を行った。カーヴァトンシナリオでは非ガウシアン性が大きくなることは知られていたが、インフラトン場とカーヴァトン場両方が現在のCMBなどの揺らぎの起源を担うような場合はあまり調べられていなかった。我々はそのようなシナリオで、具体的なインフレーションモデルをいくつか仮定し、非ガウシアン性、初期パワースペクトルの波数依存性、重力波モードの大きさを包括的に調べた。それぞれのモデルにおいて、インフラトン場の揺らぎとカーヴァトン場の揺らぎがどの程度の割合で現在の揺らぎに影響するか、によって非ガウシアン性がどのようになるか、また、パワースペクトルの波数依存性や重力波モードの観測からの制限も考慮し、どのようなモデル、パラメタのときに現在の観測と矛盾せずに大きな非ガウシアン性が生成されるかについて調べた。 また、現在の加速膨張宇宙についても研究を行った。特にダークエネルギーの揺らぎの性質が状態方程式の制限にどのような影響を与え得るか、について最新のデータを用いて詳細に調べた。この際、現象論的にダークエネルギーの揺らぎの性質を表すパラメタである"音速"、"粘性"パラメタを変化させ、その影響を見た。また、他の宇宙論パラメタの決定がダークエネルギーの性質の決定にどのような影響を及ぼすか、についても研究を行った。
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