今年度は主に、宇宙初期揺らぎの非ガウス性が素粒子論から示唆される初期宇宙の進化モデル、またバリオン非対称性の生成メカニズム、および暗黒物質の性質(生成過程)に他対してどのような示唆が得られるかについて研究を行った。まずはカーバトンモデルと呼ばれる初期揺らぎの生成メカニズムでの非ガウス性を詳細に調べた。自己相互作用を含むようなカーバトン場から生成される初期揺らぎの3点関数、4点関数について詳細に解析し、将来の観測で、カーバトン場のポテンシャルについても調べることができる可能性があることを指摘した。また、このモデルにおける、バリオン非対称性生成や暗黒物質の生成についても非ガウス性との関連を調べた。ある状況では初期揺らぎの非ガウス性を大きく生成する場合、同時に等曲率揺らぎも大きくなってしまい、現在の観測データを矛盾してしまうことがあるため、将来の観測で初期揺らぎの非ガウス性が大きいことが分かった場合、バリオン数生成のメカニズムや暗黒物質生成についても大きな示唆が得られうることを指摘した。 また、宇宙の密度揺らぎの観測が軽いグラヴィティーノの質量に対してどのような制限を与える事ができるかについても議論した。また、寿命の長いcharged massive particleの宇宙論的な影響についても調べ、宇宙の大規模構造の観測からこのような粒子の性質について制限が得られることも議論した。さらに、現在、将来の宇宙観測データからニュートリノ質量に対してどの程度の制限が得られるかについても詳細に解析した。
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