研究概要 |
本研究では,質量数130領域の奇奇核に現れるダブレットバンドに対して新たな枠組みにより計算を行い,原子核の励起メカニズムを明らかにした。中重核領域の奇奇核の数値解析はこれまでに核子対殻模型により行われてきたが,計算で得られた波動関数は非常に複雑になるため,一部の励起状態の構造は解明されていなかった。研究代表者等は2核子コア結合模型という枠組みを構築し,質量数130領域のダブレットバンドの数値解析を実行し,幅広い核種のエネルギー準位や電磁遷移の実験値を再現した。計算で得られた波動関数を解析したところ,核子対殻模型計算によって示された原子核の新しい励起メカニズムの起源を再確認すると共に,未解明であった励起状態の構造を明らかにした。この研究は, The European Physical Journal A 誌に発表した。 また,研究代表者等は殻模型を用い,質量数80領域の偶偶核の精密計算を行った。この領域の核子間にはたらく相互作用の研究は現在まであまり行われてこなかったため,本研究では現象論的な有効相互作用を用いた。計算で得られた波動関数を核子対殻模型により解析し,質量数80領域に現れる偶偶核の集団運動と単一粒子運動のメカニズムを明らかにした。この研究は, Physical Review C誌に発表している。 さらに,平均場を用いた生成座標法の理論体系の整備している。この枠組みで単一軌道を用いた予備的な計算を行い,殻模型計算のエネルギー準位を再現できることを確認した。今後,この理論体系を整備し,幅広い核種領域の原子核構造を明らかにする予定である。
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