研究概要 |
本研究の成果は, 質量数80領域の偶偶核・奇核について殻模型により精密計算を行い, 原子核の励起メカニズムを明らかにしたことである。この領域の核子間にはたらく相互作用の研究は現在まであまり行われてこなかったため, 本研究では現象論的な有効相互作用を用いて数値解析を実行し, 幅広い核種のエネルギー準位や電磁遷移の実験値を再現した。殻模型による結果を核子対殻模型により解析したところ, 質量数80領域に現れる偶偶核の低エネルギー状態は主に集団運動核子対で作られており, 高スピン状態は0g_<9/2>軌道にある中性子2個の整列の寄与が大きいことを確認した。この研究は, Physical Review C誌に発表している。 また本研究では, 質量数100領域の奇奇核に現れるダブレットバンドに対し2核子コア結合模型を適用し, 幅広い核種のエネルギー準位や電磁遷移の実験値を再現することに成功した。計算で得られた波動関数を解析したところ, 質量数100領域のダブレットバンドは, 中性子1個と陽子1個の角運動量の箸運動と偶偶核のコアの励起により生じることを明らかにすると共に, この励起メカニズムは質量数130領域で解明されている構造と同じであることを確認した。この研究は, Progress of Theoretical Physics誌に発表した。 さらに, 平均場を用いた生成座標法の理論体系を整備している。この枠組みで開放殻の予備的な計算を行い, 殻模型計算のエネルギー準位を再現できることを確認した。今後, この理論体系を質量数80領域の原子核に適用し, この領域の原子核構造を明らかにする予定である。
|