10^<20>eVを越える宇宙線が今までに十数例観測されているが、到来頻度は1km^2あたり100年に1個と非常に小さい。その起源を探るためには検出面積を広げてできるだけ多くの宇宙線を観測する必要がある。JEM-EUSOでは国際宇宙ステーションに取り付けた超広角望遠鏡により、宇宙線が大気中を通過した時に発する300~400nm領域の蛍光紫外線をとらえて観測を行う予定で、現在その開発を進めている。雲がある時に背景光の増加が予想されるが、その影響を見積もることが本研究の目的である。 本年度は気球飛翔の機会が得られなかったため、代替観測として東大宇宙線研究所乗鞍観測所において330~400nmの7波長帯(透過幅10nm)の狭域フィルターと300~430nmを透過するBG3フィルターを用いて夜光観測を行った。雲海による夜光の反射光を測定する予定であったが天候に恵まれず2晩のみ雲海のない条件で観測できただけであった。天頂からの夜光はBG3フィルターの透過波長域で約700photons/ns・sr・m^2、そのうち約200photonsが星、黄道光と見積もられることから観測光量の約7割が高層大気光と人工光と考えられる。また、宇宙線を地上で観測しているMAGICやHESSのサイトで観測され報告されている夜光量に比べると1.5~2倍程度多かった。波長別に見ると昨年度に比べ390nm、400nmの光量が増加しており、観測中に薄い雲が視野中を横切っていたことから、近くの都市光が薄い雲で反射された成分が見えていたと考えられる。
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