電子銃は、加速器や自由電子レーザーの性能を直接左右するデバイスであり、そのような観点からも電子銃の開発研究は重要なテーマの一つと言える。近年、これらの分野ではRF(高周波)雷子銃が数多く開発されてきているが、本研究ではより挑戦的、先端的な研究に取り組んだ。最大の特長は、加速空洞にDAW(Disk-and-Washer)型空洞を用した点である。Back-bomhardment電子ビームの陰極への逆加速)の軽減、低エミッタンス化、短バンチ化が期待できる上、空洞間の結合が大きいため、空洞の工作精度の要求を低くでき製作や調整が容易になる。昨年度、電磁場シミュレーションによる設計、製作を行った空洞を、今年度初めに、共振周波数調整の最終調整を終えた。その後、東京理科大学総合研究機構の赤外自由電子レーザー研究センターの遠赤外自由電子レーザー装置のビームラインに設置した。即時に、電子ビーム生成・加速に必要な高出力の高周波を投入ずることは、洗浄等処理を施しても空洞表面には微細な突起や分子の付着等が存在し放電が起こるためできない。真空値や放電の様子を観察しながら、徐々に高周波を投入するエージングに取り組んだ。パルス幅は規定より短い1μsecに固定し、パルスの繰り返しと尖頭値を変化させながらエージングを進めた。そして、同パルス幅で電子ビームの生成、加速を確認し、スクリーンモニターを用いO-scan法によるエミッタンス測定の予備実験を行った。
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